功名が辻〈1〉 (文春文庫)



功名が辻〈1〉 (文春文庫)
功名が辻〈1〉 (文春文庫)

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凡人として誇らしく生きる秘訣を教えてくれる本

2006年のNHK大河ドラマの原作だ。
山内一豊といえば、凡人と思っていたので、NHK大河ドラマでの扱いに違和感を持っていたら、原作ではきっちり凡人として描かれていた。

それは否定的な扱いでなく、凡人を肯定して描かれているのだ。
それは素晴らしいことで、元気が湧いてくることだと思う。

ぼくも凡人、世の中の大多数の人も凡人。
その凡人たちがどうすれば後悔しない人生を過ごせるのか、充実した人生を送全うできるのか、司馬遼太郎は山内一豊と千代を通して教えてくれる。

最後、土佐に入ったとき、山内一豊は一領具足と力で対決する。
それまでの人生観と異なる対応だし、生き方だ。
司馬遼太郎は何を伝えたかったのだろう? 気になる.そして考えさせられる。
「一豊」という武将

山内一豊のイメージは女房の尻にひかれた優柔不断でややもすれば軟弱な男であった。しかし、本書を読んでそのイメージを改めた。戦国という死闘、裏切り、権謀術数が渦巻く時代を家康の時代まで生き抜き、ついには土佐一国の大名にまでのぼり詰るには、妻である千代のサポートだけでなく一豊の武将としての運・強さ・したたかさもあってのことだろう。


さくさく読めるよ

この本は奥さんにの助言で山内一豊が出生したようなイメージが大きいが、
それだけが要因ではないと思う。山内一豊の『己を知る』ことを意識した生き方も
影響しているように思う。
そういう意味で私は
『謙虚な生き方は人をひきつける』
ということをこの本から学んだような気がする。

余談:さくさく読めてしまうのはさすが司馬遼太郎、内容を掘り下げるのがうまい。
野太く功名が辻!?明るめで功名が辻!?

功名が辻。手柄を上げることが武士としての道である、という意味だと思いますが、その荒々しさだけを求めて読むと物足りなさを感じるのは否めません。

司馬遼太郎さんの作品は、義経、燃えよ剣に次3冊目ですが、前の2冊に比べると随分優しい書き方がされている印象を受けます。それはおそらく解説にもある通り、才色兼備な千代をいかに愛すべきキャラクターとして書き上げるかという著者の配慮なのでしょう。(読んでいて仲間ゆきえさんがビタッとはまること請負です。) ここに山内一豊の律儀者というキャラクターが拍車をかけていることは言うに及びませんから、司馬遼太郎イコール文学的な男のかっこいい文章というイメージが少し和らぐのも納得です。元祖親方様信長も是非に及ばずと認めてくれるでしょう。

さて、ストーリーですが、全4巻あるだけに本能寺から関が原までしっかりと歴史を追っています。山内一豊というあまり目立たない武将が主人公だけに客観的に時代を追えるのではないでしょうか。栄華を誇った後の秀吉の狂った様が細かく描かれている点も興味深いです。

読んでいて武者震いするようなシーンはさほど多くはないものの、それでも歴史小説を読んでいて大抵の男子が陥る、まるで自分も戦国に生きた一人の武将にでもなった気持ちで長台詞を復唱してしまうような場面、やはりあります。また細川氏の妻ガラシャの最期や、使いとして夜道山道を走り、途中襲われた時には、着ぐるみもろとも持っていた金貨をぶちまけその隙に逃げ、更に自分はその分追いはぎなどしてなんとか指名を成し遂げる一豊の家臣のくだりなど…。司馬作品、裏切りません。そこにまったくかわいらしく、おちゃめで賢い女性千代となんともいい難い男性像の一豊(と書きつつ、いわんや自分などと赤面の私…)のテンポのいい夫婦仲も描かれているわけですから、タイトルコールはどちらかといえば、明るめで功名が辻!でしょうか?


千代の描き方がよかった

司馬さんの作品は推理や分析、資料に偏ってしまいやや小説離れする傾向がありますが、この『巧妙が辻』は小説として楽しめました。
なにより千代が物語を盛り上げてくれます。彼女を才知に長けつつも明るくお茶目な女性として描いたことが、小説の内容を明るくしたのでしょう。他の歴史小説と異なりさほど堅い場面や表現がないので、歴史小説が苦手な人でも楽しめるかと思います。
お薦めです。



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